米国失業率にみる統計の真実を探る

ワシントン(CNNMoney) 米労働省は2日、11月の雇用統計を発表した。失業率は8.6%と前月の9%から大幅に低下し、2009年3月以来の低水準となった。市場予想は横ばいだったが、予測を上回る大幅な改善となった。

失業率10 件が低下した理由は2つ考えられる。1つは無論、雇用が増えたためだが、一方で、職探しを断念した人が増えたことが挙げられる。ネーションワイドのチームエコノミスト、ポール・バルー氏は、米国の労働市場は出入りが激しくなっており、失業率10 件は再び上昇する恐れがあると指摘する。

非農業部門の就業者数は前月比12万人増で、市場予測の11万人増をわずかに上回った。また9・10月分の雇用者数も上方修正され、2カ月間で計7万2000人上乗せされた。

業種別では小売が約5万人増で、その半数以上が衣料品店やアクセサリ店での雇用増だった。さらにレジャー・サービス業でも2万2千人増加し、その大半はレストランでの増加分だった。

J.H.コーンの経済調査担当ディレクター、パトリック・オキーフ氏は「小売業界は、今後消費者需要が予想以上に高まると見ている」とし、「先行きを楽観視する小売企業が増えていることは事実だが、雇用増は一過性のものである可能性も否定できない」と指摘する。

雇用は改善傾向にあるが、全体的に見れば米国の労働市場金融危機からの回復には程遠い。失われた880万人の雇用のうち、これまでに回復したのは3分の1に満たない。依然として1330万人もの人々が失業中で、そのうち失業期間が半年を超える人の割合は43%にも上る。

最近の日経平均外国為替相場は投資家心理を反映して、一進一退の様相を呈していますが、今回のニュースにより来週月曜日以降の市況にも良い影響を与えそうです。

しかしこの失業率の数値の改善には実は裏があり、数値の取り扱いには注意を要します。

なぜなら11月〜12月はアメリカではクリスマス商戦で年間で最も小売業が忙しくなる期間であり、臨時に大量の雇用が創出されます。
日本とアメリカの文化の差ですが、日本では1人に贈るプレゼントの数は1個が普通ですが、アメリカでは1人の人に対して平均2〜3個のプレゼントを贈る習慣があります。そして、人々がクリスマスプレゼントの準備を始めるのが感謝祭直後の週末です。そのため、アメリカでは感謝祭(11月の第4木曜日)直後の金曜日は「Black Friday(商店が黒字になる金曜日)」と呼ばれています。
また感謝祭はアメリカ人にとってゴールデンウィークのようなもので、年間で最も旅行に出かける人が増える時期でもあります。

ここで冒頭のCNNの記事をもう一度読んでみてください。確かに雇用が増加した業種は衣料品やアクセサリーなどの小売業、外食産業なのです。このようなアメリカの文化的な事情を背景とする失業率の改善は、真の意味での景気回復の兆しとは即時に判断するべきでないことに留意する必要があります。

無機質な統計を鵜呑みにすることなく、なぜそのような数値になったのかという背景を考えることが、統計を利用する上では欠かせないと思います。
みなさんも統計の背景を自分で考えて、統計を活用してくださいね!!